※本記事はネタバレを含みます、閲覧の際はご注意ください。
監督・編集:岸 善幸
原作:朝井 リョウ
脚本:港 岳彦
音楽:岩代 太郎
キャスト
寺井 啓喜:稲垣 吾郎
桐生 夏月:新垣 結衣
佐々木 佳道:磯村 勇斗
諸橋 大也:佐藤 寛太
神戸 八重子:東野 綾香
”普通”から見れば”異常”な彼らにとっての”特別”な存在
神戸が諸橋に自分の思いをぶつけるシーンが特に印象的でした。
神戸が感情的になって、思いを一方的に伝えた後、冷静になって「気持ち悪いよね、ごめん」と謝るシーン。これがとてもリアルで、自分の姿を重ねてしまいました。
また、神戸の感情を受け取った諸橋が、「大丈夫、繋がれそうだから」と告げ、神戸が「うれしい」と返すシーンもとても良かったです。
神戸にとって諸橋は、男性恐怖症である自分が唯一”普通”に接する事のできる男性で、”特別”な存在でした。
自分でなくとも諸橋が一人でないならば嬉しいと言える神戸にとって、諸橋は本当に大事な存在だったのだということが伝わってきました。
普通とは、正しさとは
稲垣さん演じる寺井 啓喜は終始一貫して、自分の正しさの外にある存在に対し、歩み寄ろうとしない人間として描かれます。
寺井は、自分の価値観にない、”普通”でない存在を受け入れようとしない極端な例であると思います。
しかし、寺井は極端すぎるにせよ、実際に全く異なる価値観を持つ人を目の前にしたとき、自分はそれを受け入れられるのか と考えると分からなくなりました。
社会で生きていく中で、”普通”からは外れた価値観を持つほとんどの人達は、そのことをオープンにしていないだろうと思います。
また、自分もそういった受け入れられ難い一面をどこか持っているようにも思います。
多様な価値観がある中で、何が良くて、何が悪いのか。正しい欲望とは何なのか。そのようなことを考えさせられる作品でした。
あらすじ
本作では、3つの物語が同時に進行し、ラストに向けて交錯していく。
1.寺井家
寺井 啓喜は検事。妻と小学4年生の息子がいる。息子は学校に行けず引きこもっている。
ある日の朝、啓喜は息子からYoutuberになりたいと告白される。啓喜は、「現実をみなさい」とその告白を一蹴する。
”息子のことを理解しようとしない啓喜”と”息子のことを考えて応援する妻”
家族の関係には、段々とひびが入っていく。
2. 桐生と佐々木
桐生 夏月は30代の女性。仕事は量販店の接客。周囲の同級生たちは結婚し、子どもがいる。それが”普通”。ある日、仕事中に同級生にであい、同級生の結婚式に参加することになる。そこで、学生時代に引っ越してしまった佐々木が地元に帰ってきていることを知る。
”普通”の人たちとは異なる性嗜好を持つ桐生と佐々木が、明日を生きるために、協力して生きていくことを決意する。
3.神戸と諸橋
神戸は大学生の女性。男性恐怖症であり、男が近くにいるだけで過呼吸になってしまう。そんな彼女だが、同じ学部でダンスグループに所属する諸橋にだけは、恐怖感を覚えることなく接することができた。
男性恐怖症にも関わらず、男性に恋をしてしまう神戸と周りから距離をおいて生きようとする諸橋の関係が描かれる。